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呼吸筋(補助呼吸筋)ストレッチとは
呼吸筋ストレッチとは、呼吸に関わる筋肉である呼吸筋を動かしたり柔軟にしたりすることで胸郭の可動域を広げるためのストレッチです。
呼吸筋は、横隔膜や肋間筋などの肺を取り巻く広範囲の筋肉で構成されています。
肺は自発的に呼吸の運動を行うことができないため、呼吸に関わる胸郭の動きは呼吸筋が担っています。そのため、呼吸筋ストレッチを行って、呼吸筋を柔らかくすることで効率的でリズムの整った呼吸に導くことができると言われています。
呼吸筋ストレッチ体操のやり方を解説
呼吸筋ストレッチ体操のやり方として、以下のようなものがあります。
- 首のストレッチ
- 肩のストレッチ
- 背中のストレッチ
- 体幹のストレッチ
- 腹部・体側のストレッチ
- 胸部のストレッチ
首のストレッチ
呼吸筋ストレッチとして、首のストレッチがあります。
首の筋肉は、呼吸時に補助的な役割を果たしており、これをストレッチすることで呼吸が楽になる効果が期待できます。
- 頭をゆっくり横に傾ける
- 頭を傾けた方向と逆の手を斜め下にまっすぐ伸ばす
- その姿勢のまま、鼻からゆっくり息を吸う
- 息を吐きながら、ゆっくり元の姿勢に戻す
- これを左右それぞれ2~3回ずつ繰り返す
肩のストレッチ
呼吸筋ストレッチのひとつとして、肩のストレッチがあります。
このストレッチは、肩の筋肉を柔軟にすることで呼吸補助筋の働きを促進し、呼吸状態を改善する効果が期待できます。
- 肩幅ほど足を開いてまっすぐ立つ
- 息を吸いながら肩を前から上へ、さらに背中側へ引く
- 息を吐きながら肩の力を抜く
- この動きを5回繰り返す
肩の筋肉は首や胸郭の筋肉とつながっており、これをほぐすことで呼吸がしやすくなります。また、ストレッチを行う際は、肩を上げる動作中にかかとが床から離れないよう注意しましょう。
背部のストレッチ
背部のストレッチも、呼吸筋のストレッチのひとつです。
このストレッチは、胸郭の動きを改善し、呼吸を楽にする効果があります。また、肩こりの予防や姿勢の改善にも役立ち、効率的な呼吸をサポートします。
- 両手の指を組み、胸の前で軽く握る
- 息を吸いながら猫背になるように背中を丸め、胸から前に両腕を伸ばす
- 息を吐きながら元の姿勢に戻す
ストレッチを行う際は、背中を丸めて大きなものを抱え込むような体勢を意識すると効果的です。また、立って行う場合は、かかとに重心を置き、膝を軽く曲げて安定した姿勢を保つようにしましょう。
体幹のストレッチ
体幹のストレッチも、呼吸筋のストレッチになります。
このストレッチでは、息を吐く際に関与する筋肉を柔軟にし、効率的な呼吸をサポートします。
- 頭上で両手の指を組み、リラックスした状態で立つ
- 息を吸いながら、組んだ手を頭上に持ち上げる
- ゆっくり息を吐きながら、手の平が下を向くようにして両手をさらに上へ伸ばす
- 息を吐ききったら、元の姿勢に戻る
このストレッチを行う際は、全身をリラックスさせ、動作をゆっくり行うことを意識しましょう。体幹を意識することで、より効果的に呼吸筋をほぐすことができます。
腹部・体側のストレッチ
呼吸筋をストレッチする方法として、腹部と体側のストレッチもあげられます。
このストレッチは、息を吐くときに関与する筋肉を伸ばすことができるとされています。
- 両肘を曲げ、手を後頭部に当ててリラックスした姿勢で立つ
- ゆっくり息を吸いながら、体を曲げた肘と逆の方向に傾ける
- 息を吐きながら、肘からかかとまでが真っすぐになるように伸ばす
- 息を吐ききったら、元の姿勢に戻る
- 反対側も同様に行う
このストレッチを実施するときは、腰や肘が横や前後にずれないように注意する必要があります。
また、背中が丸くならないことや、肘を上に引っ張るような感覚で行うことを意識すると効果的です。
胸部のストレッチ
胸部をストレッチすることも、呼吸筋のストレッチにつながります。
胸部のストレッチは呼吸筋の中でも息を吐くときの筋肉を伸ばす効果があります。
- 両手を後ろで組み、リラックスした姿勢を取る
- ゆっくり息を吸いながら胸を張るようにして、組んだ手を後ろに引っ張る
- 息を吐きながら、胸部の筋肉が伸びているのを感じながら手を引っ張る
- 息を吐ききったら、ゆっくり元の姿勢に戻る
両手を組んで行うことが困難なときは、両手を離した状態で後ろに手を引っ張るようにしましょう。
呼吸筋ストレッチをする際の注意点
呼吸筋ストレッチをする際の注意点には、以下のようなものがあります。
- ゆっくりストレッチする
- 体調不良の痛みがある場合はストレッチしない
- 呼吸をとめない
- 持病がある人は事前に病院で相談する
ゆっくりストレッチする
呼吸筋ストレッチをする際は、ゆっくりストレッチするように注意する必要があります。
ゆっくりとストレッチすることで、急な運動によるケガや不調を防ぐことができます。
また、ゆっくりとした動きから深い呼吸に導くことで、より呼吸筋ストレッチの効果が出やすくなると言われています。
コツとして、ストレッチでは適度な伸ばし加減に達するまでに約10秒ほどかかるため、それ以降も時間をかけて行ったほうが効率的です。
体調不良や痛みがある場合はストレッチしない
体調不良や痛みがある場合は、呼吸筋ストレッチは避けるようにしましょう。
ストレッチを行うことで、かえって体調不良の症状を悪化させる可能性があるためです。
そのため、ストレッチ中に痛みを感じた場合は、すぐに中止しましょう。
呼吸をとめない
呼吸筋ストレッチをする際は、呼吸をとめないようにすると良いでしょう。
ストレッチ中に呼吸を止めると体が緊張状態に陥り、筋肉を効果的に伸ばすことができなくなります。
一方で、呼吸を止めずにストレッチを行うと筋肉がよく伸びるようになり、血流も上がるため効果的に行うことができます。
また、呼吸を止めた状態は、血圧の上昇などを招き体に負荷がかかることになるため、ストレッチ中の呼吸はリラックスして行い、ゆっくりと鼻から吸って口から吐くように意識しましょう。
持病がある人は事前に病院で相談する
持病がある人は、呼吸筋ストレッチをする前に、事前に病院で相談する必要があります。
これは、症状の悪化を防ぎ、新たな合併症を予防するためです。医師が運動制限を設けている場合や、医師が現在の心身の状態を診て、ストレッチを含めて運動を新たに制限する場合もあります。安全にストレッチを行うためにも、専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。
呼吸筋のストレッチをする目的
呼吸筋のストレッチをする目的として、以下のようなものが挙げられます。
- メンタルヘルスの改善が期待できる
- 自律神経を正常に保つ
- 呼吸のしづらさを軽減し、深呼吸がしやすくなる
メンタルヘルスの改善が期待できる
呼吸筋のストレッチをする目的として、メンタルヘルスの改善があげられます。
脳にある扁桃体は感情と呼吸の2つを管理しており、不安や緊張を感じると呼吸が浅く速くなるようにできていると言われています。
このように感情と呼吸は連動しているため、深くゆっくりとした呼吸を意識することで感情をリラックスした状態へと意識的にコントロールすることができるでしょう。
また、呼吸筋はストレッチを継続して行うことで徐々に柔らかくなり、誰もが緊張しやすい状況でも緊張しにくくなることがあります。
自律神経を正常に保つ
自律神経を正常に保つことも、呼吸筋ストレッチの目的のひとつと言えます。
自律神経は体の緊張状態をコントロールする役割を持つ神経で、交感神経が刺激されると心身が緊張状態になり、副交感神経が刺激されるとそれを緩める方向へと働きバランスを取っています。
深呼吸や呼吸筋ストレッチをすることで、副交感神経が刺激されて心身をリラックスした状態に導くとされています。
また、呼吸を楽にすることで副交感神経がさらに活性化し、不安や緊張などの軽減する効果も期待できます。
呼吸のしづらさを軽減し、深呼吸がしやすくなる
呼吸筋ストレッチの目的のひとつとして、呼吸のしづらさを改善し、深呼吸をしやすくすることもあげられます。
ストレッチをすることによって呼吸筋がほぐれると、呼吸するときに胸郭が動きやすくなるため、肺の機能を改善することができると言われています。
呼吸器に関わる筋肉や肺機能を高める方法
呼吸器に関わる筋肉や肺機能を高める方法の中には、以下のようなものがあります。
- ウォーキングの習慣を作る
- 背筋を伸ばす
- 吸い込んだ空気を全て吐き出す
- 大声で叫ぶ
ウォーキングの習慣を作る
ストレッチ以外の呼吸器に関わる筋肉や肺機能を高める方法として、ウォーキングの習慣を作ることがあげられます。
ウォーキングを行うことは、心臓や肺など呼吸筋を鍛え、心肺の機能を向上させることにつながると言われています。
また、ウォーキングの際は息を吐くときに意識を集中させるようにすると、吸うときに空気を取り込みやすくなります。
背筋を伸ばす
呼吸筋を鍛えたり肺機能を高めたりする方法として、背筋を伸ばすこともあげられます。
呼吸筋と姿勢を保つ筋肉は同じ筋肉であるため、背中が曲がって姿勢が良くない場合は呼吸が浅くなりがちです。
そのため、普段から背筋を伸ばすことを意識して生活すると良いでしょう。
日常生活の中ではスマートフォンなどを見るときに姿勢が猫背になりやすいため、注意する必要があります。
吸い込んだ空気を全て吐き出す
吸い込んだ空気を全て吐き出すようにすることも、呼吸器や肺機能を高めることに役立つと言われています。
息を吐ききった時に肺に残る空気の量は、年齢を重ねるにつれ増えてくると考えられているため、意識して息を吐ききることが呼吸器や肺機能を高めることにつながりやすいと考えられています。
また、肺に残る空気の量を増やさないことで、新鮮な空気を多く取り込みやすくなります。
深呼吸習慣化デバイス「ston s」

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大声で叫ぶ
呼吸筋を鍛え肺機能を高める方法の一つに、大声で叫ぶというものもあります。
呼吸筋のひとつである横隔膜を使って腹式呼吸をすると、肺を押し上げるようにして息を吐くため、楽な呼吸ができるようになります。この動作の自然なトレーニング方法として、大声で叫ぶことや歌うことが有効であると言われています。
また、朗読をしたり大きな声で歌ったりと声を出すトレーニングをすることで、深く長い呼吸を習得しやすくなります。
具体的には、詩吟をすることや、入浴時に歌うこともおすすめです。
呼吸筋ストレッチに関するよくある質問
横になりながら呼吸筋のストレッチをする方法はありますか?
横になりながら呼吸筋のストレッチをする方法としては、以下があります。
首のストレッチの場合、以下の手順があります。
- 仰向けになり深呼吸をする
- ゆっくり息を吸いながら顔を横に向ける
- 息を吐きながら顔を正面に戻し、反対側も同じように行う
- この手順を10回ほど行う
胸と肩のストレッチの場合、以下の手順があります。
- 横向きになる
- 両膝を軽く曲げ、両手を前に伸ばす
- ゆっくり息を吸いながら、上側の腕を頭上まで持ち上げ、胸を開くように腕を背中側に回す
- 息を吐きながら下を通して元の位置に戻す
- この手順を左右と反対回しで10回ずつ行う
胸と肩のストレッチの場合、以下の手順があります。
- 仰向けになり深呼吸をする
- ゆっくり息を吸いながら膝を抱え、首を持ち上げる
- ゆっくり息を吐きながら元に戻す
- 息を吐きながら下を通して元の位置に戻
- この手順を10回ほど行う
これらの呼吸筋ストレッチは、起床後と就寝前など、日々のルーティンに組み込んで実施すると効率的です。
呼吸が楽になるマッサージはありますか?
呼吸が楽になるマッサージとしては、以下のものがあります。
- リラックスした楽な状態で横になり、深呼吸をする
- 両手を肋骨の下の部分に当て、人差し指から小指を使い軽く押してマッサージをする
- ゆっくりした深呼吸を、マッサージをしながら1、2分ほど続ける
このようなマッサージをすることで、呼吸筋のひとつである横隔膜が柔軟性を取り戻して、楽な呼吸へと改善させる効果が得られると言われています。
ポイントとして、マッサージ中はお腹が膨れるように深呼吸を続けるようにしましょう。
また、お腹が張って苦しくなりやすいため、食事の直後は避けて実施しましょう。
呼吸が心と体に与える影響とは何ですか?
意識してゆっくり深く呼吸することで、心身をリラックスした状態へ導くことができます。その結果、喘息といった呼吸器疾患などの悪化予防につながります。
また、深い呼吸をすると、心拍数が減少し、血圧が下がるという生理学的な変化が起こります。
心身がリラックスした状態になることで、不安やストレスが和らぐといった効果もあります。
喘息といった呼吸器疾患は呼吸が浅い、速いなどの状況が続くと体が緊張状態に陥り、症状が悪化するケースがあります。そのような状態が不安や緊張を煽り、さらなる悪化を招くことがあります。
そこでゆっくりとした深い呼吸をすることによって、副交感神経を優位にして心身の緊張を緩める方向へ働かせるようにしましょう。
【監修者プロフィール】

江東こころのクリニック院長
谷本 幸多朗医師
九州大学医学部卒業後、帯広第一病院にて救急医療や外科及び内科の研修を経験する。
2013年より久喜すずのき病院にて精神科急性期医療を後期研修し精神保健指定医となる。
2018年より江東区にて一般メンタルクリニックに加えて認知症デイケアを併設した物忘れ外来も行う精神科クリニックである江東こころのクリニックを開業し、現在に至る。
▼主な経験
・精神保健指定医の経験あり
・製薬会社主催の各講演会や地域の医療職対象の勉強会において講演や座長の経験多数あり