2025.03.07

ストレスと睡眠不足の関係を紹介!質の良い睡眠条件や睡眠時間が短いことによる影響を解説

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心理的・精神的なストレスと睡眠不足の関係

心理的・精神的なストレスは自律神経を乱しやすく、眠りが浅くなる原因になると考えられています。

一般的に自律神経には交感神経と副交感神経が存在し、それぞれが対称的な働きをすると言われています。交感神経は緊張するように心身を導き、心身を活動的な状態にする働きを担う一方、副交感神経はリラックスできるように心身を導き、心身を休めるような状態にする働きがあるとされています。

自律神経が正しく機能している状態では、休息を取る時間になると副交感神経が優位に働くことにより、心身の緊張が緩和され、ゆっくり眠ることができると言われています。

しかし、ストレスを感じると自律神経が乱れ、交感神経と副交感神経の切り替えが難しくなるため、眠りが浅くなる場合があります。例えば、寝る前にストレスフルなことを考えていると、交感神経が刺激され、眠りが浅くなりやすいです。

また、コルチゾールというホルモンは、ストレスによって分泌が誘発されると言われています。コルチゾールには体内のリズムや睡眠を調整する役割があるため、コルチゾールの分泌が多くなりすぎるとホルモンバランスが崩れ、睡眠不足になる可能性があります。

睡眠の質を改善するには、深呼吸の習慣化!

ストレスで睡眠時間が短くなることによる影響

睡眠不足による心身への影響として、以下のような内容が考えられます。

  • ストレス耐性が低下する
  • 免疫力が低下する
  • 日中の注意力や生産性が下がる
  • 生活習慣病などの発症リスクが高まる

ストレス耐性が低下する

睡眠不足によって、ストレスへの耐性が低下することがあります。

例えば日常生活の中で、嫌な気分になることがあったとしても、睡眠をとることで人は精神的疲労を回復することができる場合が多いです。そのため、一度睡眠不足となると、精神的疲労を回復することができず、それがまた睡眠に悪影響を及ぼすという、睡眠不足の慢性化を招きやすいと言われています。

また、睡眠不足が長期間にわたり続く場合は、睡眠障害を発症していることも考えられます。睡眠障害をそのままにしておくと、うつ病などになる可能性も高くなるため、早めに医療機関に相談すると良いでしょう。

免疫力が低下する

ストレスが原因の睡眠不足によって、免疫力が低下する恐れもあるとされています。

一般的に、睡眠中は免疫の機能を向上させる複数の物質が分泌され、心身の免疫機能を整えているとされることが多いです。

中でも、IgAという免疫物質は唾液に含まれる形で睡眠中に分泌されると考えられています。IgAは多数のウイルスや細菌などに対して無力化する力を備えているため、適切な睡眠時間を確保しIgAを多く分泌させることで免疫力を保つことができると見込まれています。

そのため、睡眠不足に陥ると、心身の免疫機能を支える物質の分泌が少なくなり、免疫力が低下する可能性が高いです。例えば、風邪をひいたときに眠くなるのは、心身を休め病気や疲れを修復する目的で、これらの免疫物質が眠気を誘う仕組みになっているためだと言われています。

また、就寝中に何度も呼吸が一時的に止まる症状がみられる睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中の呼吸が浅くなる場合も多いです。その場合、血液中の酸素の量が少ない状態が長期的に続き、炎症が体内で生じやすくなるため、肺炎やコロナウイルスなどの症状が悪化することが多いと言われています。

日中の作業や仕事での生産性が下がる

日中の作業や仕事の生産性が下がることも、ストレスによる睡眠不足の影響として挙げられます。

睡眠不足になると、意思決定における思考力や集中力に支障をきたす可能性が高いです。そのため、日常生活でのケアレスミスなどが増加し、仕事の生産性が下がりやすいと考えられています。

例えば、睡眠不足によって以下のような仕事への悪影響が出るケースが見受けられます。

  • 小さな失敗が増える
  • 注意力や判断力が鈍り、作業や仕事に時間がかかるようになる
  • 体調を崩して、予定通りに日常生活が進まなくなる

上記のような状態が長く続いたり、そのような状態の人が増えたりすると、企業などの利益を追求する組織の場合は、経営面で大きな損失を被りかねないため、注意が必要です。

生活習慣病などの発症リスクが高まる

睡眠不足は、生活習慣病などの発症リスクを高めるとも言われています。

睡眠不足や眠りが浅い状態が続くと、交感神経の働きにより心身が緊張状態でいる時間が増えやすくなると考えられています。その上、心身が緊張状態の際は血管が縮むことで血圧が高くなるため、緊張状態の時間が続くと、高血圧になるリスクが高くなると言われています。

また、睡眠が不足していると、血糖値を下げる働きを持つホルモンの分泌量の調整が効きにくくなり、血糖値が上がる傾向があります。

他にも食欲を調整するホルモンが食欲を増やす方向に働き、食事をとりすぎてしまい、結果的に肥満につながる可能性が高いです。

これら高血圧や高血糖、肥満といった生活習慣病は、動脈硬化などのリスク要因と考えられているため、注意が必要だと言えます。

生活習慣病の治療のため、服薬指導や食事指導を受けている人で、症状の改善があまり見られない場合は、睡眠不足が関連している可能性も考えられます。

ストレスを解消できる良い睡眠の条件

ストレスを解消できる良い睡眠の条件としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 睡眠時間を満足にとる
  • 質の良い睡眠をとる
  • 毎日変わらない時間に就寝・起床する

睡眠時間を満足にとる

ストレスを解消できる良い睡眠の条件のひとつに睡眠時間を満足にとることが挙げられます。

睡眠時間を満足にとると、心身に蓄積された疲労を回復するホルモンの分泌量が多くなり、ストレスを解消できる可能性が高いです。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」によると、大人が1日に必要な睡眠時間は、約6時間以上(※)と考えられています。しかし、実際にストレスを解消するために必要な睡眠時間には個人差があり、人によって具体的な時間は異なる場合が多いです。そのため、朝目覚めた時に満足に眠ったという感覚を得られるかどうかが良い睡眠の条件と言えるでしょう。

また、日常生活の中で眠気を感じたり、疲れを感じたりすることが多い場合は、自分にとって必要な睡眠時間が足りていない可能性があるため、注意しましょう。

(※「【健康づくりのための睡眠ガイド 2023」に記載)

質の良い睡眠をとる

睡眠時間のみではなく、質の良い睡眠をとることも良い睡眠の条件のひとつです。

一般的に、質の良い睡眠は、脳の疲労回復に良い影響をもたらすと考えられています。

質の高い睡眠により脳の疲労回復ができると、注意力や識別能力などが向上し、ストレスの減少にもプラスに働く可能性が高いです。

ちなみに、質の良い睡眠とは何かという明確な定義はないとされています。しかし、睡眠時間が長いにも関わらず、朝すっきりと起きられない場合や日中に強い眠気や疲労感を感じる場合は、質の良い睡眠が取れていないことが考えられます。

他にも、睡眠途中で目が覚めたり、不安定な睡眠となっている場合も睡眠の質が悪いと言えます。

毎日変わらない時間に就寝・起床する

毎日変わらない時間に就寝し起床するといった生活リズムを整えることも、ストレスを解消する睡眠の条件と考えられます。

毎日一定の時間で就寝し起床することで、体内時計を正しく機能させて心身の機能を修復できると言われています。

例えば会社員の人が、出勤日の睡眠不足を取り戻そうとして休日に寝すぎてしまうと、生活リズムが崩れて体調不良を起こす可能性が高いです。そのため、良い睡眠を意識する上では、できるだけ休日も出勤日と同じ時間に就寝し、起床するよう心がける必要があると言えます。

また、活動と休息の時間をはっきりと区別することも、生活リズムを整えるコツのひとつだと言えるでしょう。

ストレスによる睡眠不足を解消するための対策方法7選

ストレスによる睡眠不足を解消するための、具体的な対策方法を7つご紹介します。

  • 深呼吸をする
  • 寝室でのスマホの操作を控える
  • 起床後に日光を浴びる
  • リラックス効果のあるアロマを利用する
  • 入眠の約2時間前にお風呂に入る
  • 寝室を睡眠に適した温度に調節する
  • 定期的に体を動かす

深呼吸をする

ストレスによる睡眠不足を解消するための方法として、深呼吸が挙げられます。

深呼吸を行うことによって、心身の緊張が緩まり、リラックスできる可能性が高いです。そのため、ストレスによって寝つきが悪かったり、睡眠の質が悪いと感じたりする場合は、深呼吸を意識的に行うことで、深い眠りにつくことができると考えられます。

また、考え事などが脳裏に浮かんで止まらなくなると、布団に入ってもなかなか眠ることができない場合があります。その際は、深呼吸をすることに集中することで、自分でも気づかないうちに寝付くことができる場合も多いです。
ストレスによる睡眠不足を解消するための方法として、深呼吸が挙げられます。


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  • 罪悪感0で瞬間リフレッシュが可能
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寝室でのスマホの操作を控える

寝室でのスマートフォンの操作を控えることも、ストレスによる睡眠不足の解消につながります。

寝る前に電子端末などの強い光やブルーライトを目にすると、眠気を誘うメラトニンという物質の分泌が抑制され、睡眠の質を下げてしまう可能性があります。さらに、光の刺激のみではなく、目にした文章や映像の内容を考えて寝付けなくなることも多いです。

そのため、寝るときは布団にスマホなどの端末を持ち込まないことが、睡眠不足の解消につながると言えます。

また、蛍光灯もブルーライトを発しているため、寝室の照明をオレンジの光に切り替えることも有効であると考えられています。

起床後に日光を浴びる

睡眠不足の解消には、起床後に日光を浴びることも良いでしょう。

太陽光を浴びると体内で分泌されるメラトニンには、就寝前に眠気を誘うばかりでなく、体内時計の周期を早める働きもあると言われています。

また、そもそも人間に備わっている体内時計は正確ではなく、24時間よりも長いと考えられています。

そのため、自分で早めの周期に体内時計を調節しないと、就寝時間は徐々に遅くなってしまう傾向にあります。

以上のことから、曇りや雨で日差しが少ない時でも、まずは朝起きたらカーテンを開いて、視界に太陽光を取り入れることで、夜間の睡眠の質を向上させることができると言えます。

リラックス効果のあるアロマを利用する

リラックス効果のあるアロマを利用することも、ストレスによる睡眠不足の解消に役立つと考えられます。

人間の五感の中で視覚や聴覚とは異なり、嗅覚のみは睡眠中も機能が低下しないとされることが多いです。そのため、リラックス効果のあるアロマを就寝前や就寝中に利用すると、睡眠の質を向上させる効果を得られると考えられています。

リラックス効果のあるアロマの例として、以下のようなものが挙げられます。

  • ラベンダー(リラックス効果、ストレス解消効果)
  • オレンジスイート(ストレス解消効果)
  • スイートマジョラム(リラックス効果)

アロマを焚く際に、加湿器やディフューザーを使用することが難しい場合や面倒な場合は、アロマオイルを入浴時に浴槽へと滴下したり、マグカップなどに滴下して枕元に置いたりして楽しむことも有効だと言えます。

入眠の約2時間前にお風呂に入る

ストレスによる睡眠不足を解消するために、入眠の約2時間前に入浴することも効果的だと言えます。

人間は、身体の中心体温である深部体温が低下することによって入眠へと促されると言われています。そのため、入眠したい時間の約2時間前にお風呂へ入浴し身体を温めておくと、布団に入る時間をめがけて自然と眠くなっていき、良い睡眠を取ることができる可能性が高いです。

睡眠の質を上げるコツとして、38℃から40℃くらいのぬるめのお湯で、15分から30分程度かけて入浴すると良いでしょう。ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、入眠時によりリラックスした状態に心身を整えることができると言えます。

ただし、40℃以上の熱めのお湯で入浴すると、逆効果となることもあるため注意が必要です。

寝室を睡眠に適した温度に調節する

寝室を睡眠に適した温度に調節することで、ストレスによる睡眠不足の解消が期待できます。

就寝時の室温が低いと、体は体内に熱を溜め込もうとし、逆に就寝時の室温が高いと、体は体内の熱を外に逃がすことができないと考えられています。いずれの状態であっても、熱を体外へ逃がして深部体温を下げるという働きを妨げてしまうため、睡眠の質を低下させてしまう可能性が高いです。

そのため、寝室を就寝に適した温度に調整することが、睡眠の質を高めるために重要だと言えます。

睡眠に適した具体的な室温として、夏は28℃程度、冬は18℃程度を目安に、冷暖房器具を活用して調整すると良いでしょう。

冬の間、手足が冷えて眠れない場合は、靴下を履くと熱がこもってしまい逆効果になるため、湯たんぽを使うと効果的だと言えます。また、夏の間は足に扇風機を向けるなどすると、深部体温を低下させて深い眠りにつくことができると考えられています。

その他に、寝室の湿度も加湿器や除湿器を利用して適切な状態へと調整すると良いでしょう。湿度が高すぎると体内の熱を放散させることができず、睡眠を妨げることがあると言われています。

また、湿度が高いと湿気を好む虫やカビが繁殖し、アレルギー症状などを発症する可能性があるため、注意が必要です。一方で、湿度が低すぎると呼吸器が乾いて呼吸器疾患につながることも考えられます。そのため、質の良い睡眠のために、寝室の湿度を適切に保つことも重要だと言えます。

定期的に体を動かす

ストレスによる睡眠不足の解消には、定期的に体を動かすことも効果的であると考えられます。

日中の運動は適度な疲労を誘い、睡眠を促すように体へと働きかけると考えられています。また、適度な運動をすると呼吸器が活性化され深い呼吸になるため、睡眠の質を上げられる可能性が高いです。

体を動かす際は、ウォーキングやジョギングなどの全身を使う軽い有酸素運動を、夕方から布団に入る3時間前までの間に行うのが効果的だとされています。また、一度に負荷の高い運動をするというよりは、習慣的に適度な運動を取り入れるほうがより効果を見込める可能性が高いです。

反対に、寝る直前に息が弾むような運動を行うと、かえって交感神経が刺激されて寝付けなくなる場合があります。そのため、就寝する30分前からは、ヨガやストレッチなど、深い呼吸をしながらゆったりとした運動を行うと、副交感神経を刺激し睡眠の質を向上させることに期待できます。

睡眠の質を改善するには、深呼吸の習慣化!

ストレスと睡眠に関するよくある質問

ストレスで睡眠時間が長くなる理由はなぜですか?

ストレスを受けると交感神経が刺激されるため、交感神経や副交感神経を含む自律神経のバランスが

崩れる場合があります。

このような自律神経の乱れは睡眠の質に悪影響を及ぼすため、結果的に睡眠の質が下がり、寝すぎてしまうと考えられています。

さらに、ストレスを受ける状況が長期間続き精神的な疲れが溜まってくると、寝すぎてしまうことが慢性化して過眠症を引き起こす可能性があるため、注意が必要だと言えます。

ストレスで急に眠くなるのはなぜですか?

人間がストレスを受けると、コルチコトロピンという物質が体内で分泌されると言われています。

この物質はコルチゾールと呼ばれるホルモンの分泌を促し、このホルモンが過度に蓄積することで、夜間の睡眠の質を下げてしまうと考えられています。その結果、日中に急な眠気に誘われる場合も多いです。

また、ストレスの蓄積によって夜間の睡眠の質が低下した状態が長期間続くと、起床時の倦怠感などの不調が重なり、さらに睡眠が不足するといった負のスパイラルに陥ることもあるため、注意が必要です。

不眠症にはどのような症状がありますか?

代表的な不眠症の症状として、以下の3つが挙げられます。

  • 入眠困難(なかなか寝付けない)
  • 中途覚醒(眠りが浅く何度も目を覚ます)
  • 早朝覚醒(朝早くに目が覚め再度寝付くことができない)

上記のような状態が慢性化すると、倦怠感が生じたり、集中力や意欲や食欲が低下したりなど、生活の質に影響を及ぼすようになると考えられています。

また、一度その状態に陥ると、回復させることが難しいと言われています。そのため、家庭で睡眠不足への対策を講じたにもかかわらず、長期間症状が改善されない場合は、早めに医療機関に相談する必要があるでしょう。


【監修者プロフィール】

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江東こころのクリニック院長 

谷本 幸多朗医師

九州大学医学部卒業後、帯広第一病院にて救急医療や外科及び内科の研修を経験する。
2013年より久喜すずのき病院にて精神科急性期医療を後期研修し精神保健指定医となる。
2018年より江東区にて一般メンタルクリニックに加えて認知症デイケアを併設した物忘れ外来も行う精神科クリニックである江東こころのクリニックを開業し、現在に至る。

▼主な経験

・精神保健指定医の経験あり

・製薬会社主催の各講演会や地域の医療職対象の勉強会において講演や座長の経験多数あり

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