目次
寝ると疲れがとれる理由・原因
ノンレム睡眠とレム睡眠の効果によって、脳と体の疲れがとれると考えられています。睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠の2種類が存在します。
ノンレム睡眠とは、脳が休んでいる状態の深い眠りを指します。眠りに入り、初めのノンレム睡眠で、脳内では成長ホルモンが分泌されると考えられています。
分泌された成長ホルモンは、細胞がアミノ酸を取り込み、タンパク質の合成を促進する働きを持っています。そのため、新陳代謝が促され、体力の回復につながると言われています。
一方、レム睡眠とは、脳が活動し、体が休んでいる状態の浅い眠りのことです。レム睡眠の際には、脳が働いている分、筋肉の緊張はほぐれ、体の疲れがとれる傾向にあります。
このように、主としてノンレム睡眠の際に脳の疲れがとれ、ノンレム睡眠とレム睡眠の双方で体の疲れがとれると言われています。
また、まとまった睡眠時間を確保すると、ノンレム睡眠とレム睡眠がバランスよく現れるため、疲労回復の効果がさらに得られると言えます。
寝ることで疲れをとるために意識すべきポイント
寝ることで疲れをとるために意識すべきポイントとして、以下が挙げられます。
- 睡眠時間を確保する
- 睡眠環境を整える
- 嗜好品のとりすぎを控える
- 規則正しい生活を送る
- 入浴をする
睡眠時間を確保する
寝ることで疲れをとるためには、睡眠時間を確保すると良いと言われています。
睡眠は疲れをとる役割を担っているため、寝不足な状態が続くと、体に疲れがたまりやすい傾向にあります。そのため、睡眠時間の確保を心がけ、寝不足を解消すると、疲労回復が期待できます。
ただし、睡眠の質が悪いと、睡眠時間の確保のみでは疲れが解消しない場合もあります。また、一時的に睡眠時間を確保して寝不足を解消しようとすると、睡眠リズムが崩れるケースがあります。
その場合、さらなる寝不足を招き、疲れがとれないという負の連鎖に陥ることもあるため、注意する必要があると言えます。
睡眠環境を整える
睡眠環境を整えると、寝ている間に疲れがとれやすいと考えられています。
ここで言う睡眠環境とは、寝るときの寝室の温度や湿度、照度、寝具などを指します。また、テレビやスマートフォンなどブルーライトを発する機器を寝室に持ち込まないことも、整った睡眠環境につながると言えます。
睡眠環境を整えると、睡眠の質が良くなることが期待できます。そして、睡眠の質が良くなると、寝付きがよくなったり、深く眠ったりすることができるため、睡眠中に疲れを回復できると言えます。
逆に、睡眠環境が悪いと睡眠の質が低くなりやすく、睡眠時間を確保しても、疲れが回復しない場合もあるため注意が必要です。
嗜好品のとりすぎを控える
嗜好品のとりすぎを控えて寝ることで疲れがとれる傾向にあります。嗜好品とは、カフェイン、アルコールなどを指します。
カフェインなどには覚醒作用があり、寝る前に摂取すると、寝付きが悪くなる場合があります。
また、アルコールを摂取すると浅い眠りになりやすく、中途覚醒が増えやすいと考えられています。
よって、嗜好品のとりすぎを控えると、これらの症状を抑えやすくなり、睡眠中の疲れの回復につながると言えます。
さらに、これらの嗜好品は依存性が高いと言われています。これらの嗜好品に依存してしまい、摂取量が多くなると、慢性的に眠りの質に影響が出る可能性があるため注意が必要でしょう。
規則正しい生活を送る
規則正しい生活を送ると、睡眠中に疲れがとれることが見込まれます。ここで言う規則正しい生活とは、日照時間を意識して、早寝早起きをする生活のことを指します。
早起きをして日光を浴びると、交感神経が刺激され、気持ちよく目覚められる場合が多いです。これは、日光を浴びることで、睡眠ホルモンと言われる「メラトニン」の分泌がリセットされるからだと言われています。
また、これにより、就寝時刻頃に再度メラトニンが分泌するサイクルが確立され、夜に寝付きやすくなると言われています。そのため、睡眠の質が上がり、睡眠中に疲れがとれる効果が期待できます。
なお、早起きをするのみでなく、早く寝付き、しっかりと睡眠時間を確保することでメラトニンの分泌サイクルがうまく機能するでしょう。
入浴をする
入浴をすると、睡眠中に疲労が回復する効果が見込まれます。
ぬるめのお湯につかることで、副交感神経が優位に働き、眠りに向けてのリラックス効果が得られると考えられます。
また、体の深部温度に変化があると、入眠しやすいと言われています。そのため、入浴することで体の芯の温度が上がり、風呂から出ると体温が下がるという、深部温度の変化によって、眠りにつきやすくなります。
しかし、お湯が42℃以上の場合、交感神経が優位に働き、寝付きや睡眠の質に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要と言えます。また、入浴をする際は、就寝の1時間から2時間前に、40℃前後のぬるめのお湯を張った湯船につかると良いと言われています。
疲れたときに寝る以外の対処方法
疲れたときに寝る以外の対処方法として、主に以下の4つが挙げられます。
- 深呼吸をする
- 軽い運動をする
- マッサージをする
- 湯船につかる
深呼吸をする
疲れたときには、深呼吸をすると良いと言われています。
疲れている時は交感神経が優位に働きやすい状態であると考えられています。そして、疲れに効果のある深呼吸とは、腹式呼吸のことを指す場合が多いです。
腹式呼吸は自律神経に働きかける呼吸法と言われています。腹式呼吸をすることで、副交感神経の働きが優位になる傾向があります。このように、交感神経に偏った自律神経のバランスを整えることで、疲労回復が見込めると考えられます。
なお、腹式呼吸の手順は以下を参考にすると良いでしょう。
- 背筋を伸ばす
- 腹の中の空気を口から吐き切る
- へその下の膨らみを意識しながら、3秒以上かけて鼻から息を吸う
- 腹をへこますように、6秒以上かけて口から息を吐く
腹式呼吸を寝る前に行うと、副交感神経の働きによりリラックス効果が得られ、スムーズな睡眠を期待できます。
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軽い運動をする
疲れたときの対処法の一つに、軽い運動をすることが挙げられます。
軽い運動は、全身の血流を促し、新陳代謝が活発になることで体の疲労回復が見込めると言われています。
また、軽い運動の際、日光を浴びると幸せホルモンである「セロトニン」の分泌が促され、ストレス軽減が期待できます。よって、屋外で軽い運動をすると、心身の疲れがとれやすいと考えられます。
疲れをとるための軽い運動の例として、ストレッチやウォーキング、軽いジョギングなどが挙げられます。
一方、強度の高い運動をしたり、日光を浴びすぎたりすると、疲れを体にためてしまうことがあるため、注意が必要です。
マッサージをする
マッサージをすると、疲れがとれることが見込めます。
マッサージは血液やリンパの流れを良くする効果が期待できます。そのため、体中にエネルギーを行き届かせることができ、疲労が回復する可能性が高いです。また、マッサージにより副交感神経が優位になることから、リラックスでき、ストレスが和らぐことが多いです。
そして、首や肩など上半身の疲れている箇所を押したり、ゆっくりと動かしたりするとマッサージの効果が得られやすいです。
また、リンパの流れを促すには、リンパ管が密集している足の裏を中心にマッサージをすると良いでしょう。足の末端までしっかりとマッサージすると、老廃物が排出されやすいと言えます。
マッサージをする際は、リラックスできるよう、姿勢や呼吸を整えると良いと言えます。加えて、照明や香りにも配慮すると、より効果を得られる場合があります。
そのため、疲れを感じたら疲れがたまる前にマッサージをして解消するようにすると良いでしょう。
湯船につかる
湯船につかると、疲れがとれる場合が多いと言えます。
湯船につかると、全身が温かいお湯に包まれる状態になります。この状態では副交感神経が優位に働き、リラックス効果が見込めます。
また、お湯につかり体温が上がることで、血行が促進されやすいです。血行が促進されると、老廃物が排出されたり、体のコリや張りが緩和される場合が多いです。結果的に、湯船につかることで、心身の疲れがとれると考えられます。
なお、湯舟の温度は40℃前後のぬるま湯に設定し、15分以上つかると、効果を得られやすいと言われます。
疲れて寝るに関連するよくある質問
適切な睡眠時間はどれくらいですか?
成人の場合、6時間から7時間程度が目安と考えられています。
睡眠で疲れをとるには、睡眠の質を上げるために睡眠時間をしっかりととることが大切だと言えます。
睡眠時間が短いと、疲れがとれないことにより、思考能力の低下や体調不良を招く可能性があります。その上、精神面でも不安定になる場合があるため、適切な睡眠時間を確保することが必要と言えます。
しかし、睡眠時間が長すぎると、睡眠の質が低下しやすいため、疲れがとれないケースもあります。そのため、睡眠時間と睡眠の質のバランスを保つことが疲労回復につながると言えるでしょう。
疲れがとれやすい寝方はありますか?
体の右側を下にして横向きに寝ると、疲れがとれやすいと考えられています。
横を向くといびきをかきにくくなり、いびきによる、睡眠の質の低下を回避しやすいと言えます。また、横向きに寝ると、背中を通る血管が圧迫されないため、血流が良い状態で寝れる可能性が高いです。
加えて、消化系の内臓の出口が体の右側にあるため、胃の消化がスムーズに行われる傾向にあります。消化がスムーズに行われると、自律神経への負担がかかりにくくなるため、疲労回復しながら安眠することができるようになるでしょう。
体が疲れているときのサインはありますか?
眠れないのはもちろん、起きられない、一瞬で眠りについてしまうという症状は、体が疲れているときのサインと考えられます。
疲れて心身のストレスがたまった状態では、寝付きの悪さや中途覚醒が起こりやすいです。さらに、疲れによって睡眠の質が低くなると、朝になっても起きられないケースがあります。
また、理想的な寝付き方は、徐々に眠気が押し寄せてくる状態と言えます。そのため、一瞬で眠ってしまう場合は、睡眠不足で疲れがとれていない可能性が高いと言えます。
寝ることで疲労回復はできますか?
質の高い睡眠をとると、疲労回復の効果が見込めると言えます。
睡眠時間を確保しても、睡眠の質が低いと疲労回復できない場合があります。逆に、睡眠時間が短くても、睡眠の質が高いと疲労回復が期待できます。
ただし、睡眠時間が短すぎると、睡眠不足に陥りやすいため、注意が必要です。睡眠時間と睡眠の質のバランスを保つと、効率的に疲労回復できる可能性が高いでしょう。
【監修者プロフィール】

江東こころのクリニック院長
谷本 幸多朗医師
九州大学医学部卒業後、帯広第一病院にて救急医療や外科及び内科の研修を経験する。
2013年より久喜すずのき病院にて精神科急性期医療を後期研修し精神保健指定医となる。
2018年より江東区にて一般メンタルクリニックに加えて認知症デイケアを併設した物忘れ外来も行う精神科クリニックである江東こころのクリニックを開業し、現在に至る。
▼主な経験
・精神保健指定医の経験あり
・製薬会社主催の各講演会や地域の医療職対象の勉強会において講演や座長の経験多数あり